会社の成長|株主名簿を用意しないデメリット

「(株式)会社の成長」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

売上や知名度のアップ?

商圏、販売網の拡大?

利益の伸長や支店の設置など?

どれも当たっていると思いますが、今日はもう少し内部事情の、株主の増加についてです。

 

株主は、会社の創成期には人数がごく限られているのが通常です。

経営者つまり社長だけが株主となっていることも少なくありません(一人株主)。

そこから事業を手伝ってくれる人、融資をしてくれる人が増えていき、会社の株式を手に入れることで「株主」となります。

株式と言っても、現在は株券(かぶけん)を発行することは極めて稀です。

株券という紙片をもはや会社法は過去のものとして扱っており、株券を発行する会社はその旨を登記するようになっているからです(わざわざ登記させる制度にしたのです)。

では、目に見えない株式をどのように会社は管理すべきなのでしょうか。

そんな疑問に「株主名簿」という答えが用意されています。

 

・・・が、実際のところ、株主名簿をきちんと用意している会社は少ないでしょう。

そこまで手が回らないこともあるし、そもそも株主名簿を作成する義務があるなんて、ご存じない社長さんが多いからです。

さて、株主名簿を用意していない会社で起こりうる事態をちょっと考えてみましょう。

 

株式を新しく発行することを「新株発行」と呼びます。

事業を応援してくれる方が現れたとして、その方のために新株発行したというケースです。

株式の価格を決めて、何株発行するのかを決めます(後のトラブル防止のため、税務も注意しましょう。税理士さんと話し合って進めることがほとんどでしょう)。

無事に新株発行のための支払いをしてもらい、会社は資本金の元手と新しい株主を得ることになりました。

きちんと登記も完了して、一安心。

なのですが、ではこの社長さんは「株主名簿」を書き換えたでしょうか。

おそらく・・・頭に浮かんでいないことが多いと思います。
株主名簿はあくまで会社での保管になるので、忘れてしまえばそのまま、なのです。

まだ株主が一人増えただけなら、そう困難なことはないでしょう。

しかし、これがさらに株主が増えて、発行する株式の種類も変化があって、となると?

株主総会議事録を追うにも限界があり、年月の経過とともに記憶も薄れてきます。

また、(考えたくないことですが)ある株主が、会社の方針が合わないとして、強硬姿勢に出たとします。

「議決権の数が法定数に合っていないために、決議無効である」と訴えるケースです。

さあ困りました。

これが本当であれば、株主名簿を用意していない会社は訴訟で勝つことはかなり難しくなります。
なし崩しの示談に応じるしかないでしょう。

さらに、株主によっては相続があったり、行方不明になったりすることもあり得ます。

(余談ですが、株式も相続の対象です。配偶者と子供にそれぞれ分割して相続されます)

しかし株主には変わりありませんから、株主総会の開催案内を送付したり、配当があれば支払う必要があります。

これを怠った場合に何が起こるかは、想像に難くないでしょう。

ほんのわずかな株式を持つ株主であれ、把握していない場合、会社は大きな労力をかけなければなりません。

 

会社の成長は喜ばしいことですが、それに見合った管理は必要です。

アクションを一つ取ったら、その後のフォローを万端にする。

思い当たる節があれば、すぐに行動していただきたいと思います(あとあと本当に大変なので・・・)。

田村 芳枝

田村 芳枝

新潟市の女性司法書士です。相続、遺言、登記、法人の登記のご相談は是非。

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相続、遺言、登記、法人の登記のご相談は是非。

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