会社や社団の役員は、婚姻前の氏を(現在の)婚姻中の氏と並べて登記することができます。
これは平成27年2月27日からのことで、「婚姻前の氏の併記」として公になりました。
鈴木さんが婚姻によって山田さんになったとして、
「取締役 山田○○(鈴木○○)」と登記することが可能になったのですね。
たしかに役員が婚姻によって氏を変えた場合、「どちら様ですか?」などと聞かれて面倒な思いをされることもあったのではないでしょうか。
これにより、旧姓で通じている取引先などとは登記上の混乱を防ぐことができるようになりました。
しかし、①この婚姻前の氏を併記するためには、かなり限定的な条件があります。
また、②いったんこの併記をするタイミングを逃してしまった場合、ちょっとしたテクニカル(?)な手続きを踏む必要があります。
順番に見ていきましょう。
まず、①婚姻前の氏を登録するためには、
・設立の登記の申請
・清算人の登記の申請
・役員等または清算人の就任による変更の登記の申請
・役員等または清算人の氏の変更の登記の申請
以上いずれかの登記の申請と同時に申し出ないといけないのです。
先ほどの鈴木さんを、登記官が認識できる状況でないとならないわけですね。
まだ会社の設立や、役員などに就任したときは意識が及ぶかもしれません。
「そうだ、婚姻前の氏を並べて登記できるって聞いたぞ・・・」
なんて思うには自然なタイミングですものね。
しかし、最初に私は「平成27年2月27日から」と書きました。
そうです。
それ以前だったら、そもそも制度自体がないわけですから、ほとんどの場合は婚姻中の氏に変更しているはずなのです。
ではここで、②いったん併記をするタイミングを逃してしまった場合、についてです。
私が確認したところですが、何も間違っているわけではないという前提のもと、更正登記をするしか方法はないのではないかと思います。
①の、婚姻前の氏を併記するには限定的な条件がある、としたのがここで効いてきます。
いったん更正して氏を婚姻前に戻してから(原因は錯誤となりますが)、役員就任などと同時に婚姻前の氏を併記する、という方法を取るのです。
先ほどの山田さんに、いったん便宜上、鈴木さんに戻っていただいて、役員就任などの登記と同時に婚姻前の氏を登録する・・・・。
山田→鈴木→山田(鈴木)とするということです。
なんだか書いている私も混乱しそうです。
更正登記は会社の場合、登録免許税として2万円を納める必要があるのが少々痛いのですが・・・。
それでも婚姻前の氏として併記したい場合には、こんな方法もあるということですね。
制度にのっとって、また気持ちの良い登記をするために、ぜひ司法書士にお声がけいただければと思います!