3月も残り一週間。
事業年度もそろそろ大詰め、という会社も多いのではないでしょうか。
今日は、この時期多くなってくる、役員変更の中でも「かなり」気の重い、辞任勧奨についてです。
だってそうですよね、まさか自分が「辞めてほしい」と言われるなんて思ってもいない役員に、辞任を勧めるわけですから。
この任務を仰せつかった職員さん・・・きっと新任の取締役だとか、身近な同期とかなのでしょうが、それは気が重いはず。
なんとか会社の今後のためにも気持ちよく辞めてもらいたい。
絶対に絶対に(繰り返しましたよ)揉め事にしたくない。
まず第一段階として、穏便に話しかける方法をとるでしょう。
職員さんをAさん、辞めてもらいたい役員さんをBさんとしましょう。
A「そろそろ年度締めですね・・・調子はどうですか?」
B「すこぶる順調だ!役員の任期もまだ切れないし、まだまだ頑張るよ」
A「・・・そのことなんですが・・・」
B「君にも教えてあげたいことが山ほどあるし!新年度も楽しみだね!」
暗雲立ち込めるとはこのことですが、しかし勇気を出さないといけません。
A「実はB取締役にたってのお願いがあります。今度の取締役会で、辞任をお願いしたいのです」
よくぞ勇気を出しました。
この勇気が出せずにずるずる続投・・・なんてことも、実際にはあるだろうと私は思っています。
(「あと1年くらいいいか」の諦めの境地です)
B「君は何を言っているんだね!?絶対に私は辞めないぞ!まだ会社には私が必要だ!」
A「お言葉ですが、代表(取締役)のお考えなのです。どうぞここはお願いいたします」
B「そんなはずはない!私は辞めないぞ!ほかの取締役だって私を必要としているはずだ!」
A「実は、大きく役員変更をする予定なのです。C取締役も今回で辞任されます」
・・・とまあ、かなり根回しをしたうえでの話合いになるでしょう。
では、いろいろ理由を聞き、もはや辞任やむなしの段階に至ったとします。
B「辞任届なんて書かないぞ!せいぜい「退任届」とする!これは譲れないぞ!」
A「そ、そんな・・・」
おそらくBさんの最後のプライドなのでしょう。
取締役会にて口頭で辞任を述べることを約束したとしても、登記申請には最終的に書類が必要となります。
それが「辞任届」です。
この書類の名称と、申請書に記載する添付書面の名称は一致させる必要があります。
つまり、実態が辞任なのに、タイトルが退任届、などという書面は存在するわけがないのです。
さて、どんなに言っても、Bさんが聞く耳を持たずに「退任届」を出したとします。
登記所が受け付けるはずがありません。
補正(書面の修正)を指示されるか、自分たちが登記申請を取り下げるかのいずれかです。
たしかにBさんにとっては気の毒な面もあります。
やる気もあり、任期もまだ残っているのですから、今回の件はショックだったことでしょう。
しかし本当に会社のためになることは、駄々をこねて登記を停滞させることではないですよね。
Aさんは、切り札を出すことにしました。
A「それでは、仕方ありません。Bさんを解任する決議案を提出します」
一気に穏やかではなくなりますね。
辞任という個人の意思表明とするか、解任という強硬策とするか。
B「・・・そ、それはやめてくれ・・・。わかったよ、辞任届にサインしよう」
いかがだったでしょうか。
最後の切り札をAさんが知らなかったとしたら、どんな方向に行ってしまったことでしょう。
また、そもそもBさんの就任と任期は適正だったのでしょうか。
考えることはたくさんありそうですよね。
会社の決定は人の決定でもあります。
どうぞ判断材料に、司法書士をお役立てください。
何か面白い案を持っているかもしれませんよ!